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『グローバリゼーションを擁護する』

グローバリゼーションを擁護する
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日本経済新聞社 2005-04-21
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国際的な大企業(独占企業)が途上国の貧民を搾取し、先進国の経営者だけが私腹を肥やしているというイメージは、一般的な人なら誰もが持っているステレオタイプではないだろうか。イメージとは恐ろしいもので、独占企業が途上国の貧困の原因であると経済学的に証明された事実を知っているわけでもないのに、「何となくどこかで聞いたことがあるから、きっとそうなのだろう」くらいの理由で、皆がグローバリゼーションを批判し始める。このようなデマゴーグが大衆の中に深く浸透しつつあるのは、自らの不安を払拭するために「何者か」を悪役に仕立てなければならない悲しい人間の性質がその根底にあるのかもしれない。筆者は面白い例え話を紹介している。
 
たとえば恋人にふられたことさえ、グローバリゼーションのせいにされかねないほどだ――なにしろ、恋人はブエノスアイレスへ旅立ってしまったのだから! こんな言いがかりには、こう言い返してやらねばなるまい。「いったいそれがグローバリゼーションとどう関係があるのか」と。(P56
 
グローバリゼーションを批判する人々の不安は多方面にわたっている。貧困や労働者の権利が奪われること、民主主義の欠陥が生じること、女性の権利が低下すること、各国の文化が均質化してしまうこと、環境が破壊されること、などである。では、これら全ての事象は本当にグローバリゼーションが要因であるのだろうか。
 
グローバリゼーションについてアマルティア・センは、「中心となる争点は、グローバル化そのものの是非ではなく、市場の利用の良し悪しでもなく、じつは制度的枠組が全体的にバランスを書いていること」(人間の安全保障P64)だと述べている。つまり、グローバリゼーションは概ねプラス効果をもたらす「中心傾向」を有しているのであり、当然ながらプラス効果だけでなくマイナス効果も考えられるが、そのマイナス効果に政策や制度を用いて対処することによって、グローバリゼーションが生み出す問題は最小限に抑えられるのである。
 
著者は多数の論文を引用しながら、グローバリゼーションのプラスの傾向を論じていく。ここでは、グローバリゼーションに対する偏見への反論の一例(グローバリゼーションと貧困)を簡潔に紹介する事にするが、興味があれば、本書を読んで自分自身が持つ不安を取り除いて欲しいし、そうすべきだと思う。
 
<グローバリゼーションと貧困>
まず、対内指向型政策よりも自由貿易における対外直接投資を通じた対外指向型政策の方が経済厚生の拡大に効果的であるという調査結果がOECDNBER(全米経済研究所)によって出されており、同時に、高率の生産的投資によって導かれた「東アジアの奇跡」について考えてみれば、グローバリゼーション、つまりは自由貿易が経済成長を促すものであるという説は概ね納得できる。そして、「東アジアの奇跡」以前の1970年代においては、世界の貧者の11%がアフリカに、76%がアジアに暮らしていたが、「東アジアの奇跡」以後、その比率は逆転し、1988年までにはアフリカが66%の貧者を抱え、アジアは15%にまで低下している。
 
このような経済成長による社会全体のプルアップ効果は否定できるものではない。また、その反面で一国内の貧富の差が拡大しているのではという懸念も提起されるが、それこそグローバリゼーションにその責めを負わすのは酷ではないだろうか。社会全体が貧しいまま全員が平等であるのと、社会が発展し不平等が増すのとどちらが良いのかといえば、これはもう価値観の問題でしかなくなってしまうが、私は後者の方が健全な社会だと思うし、そのような不平等が政策によって改善されるのであれば、分配されるパイが大きな分だけ後者の社会のほうがより良い社会になりうることは疑いが無い。
 
 
グローバリゼーションへの批判には盲目的になされるモノが非常に多い。イメージに扇動されてしまうことは、民主主義の担い手としてあってはならないことである。独占企業が途上国の貧者を搾取しているのというが、実際、多国籍企業が支払っているは労働者が他の職業で得る平均賃金よりも高いのであるし、先進国の文化が途上国の文化を駆逐してしまうという問題も、伝統的な価値観に極端に重きを置く文化人類学者の自己満足に過ぎないのではないか。「変化こそ唯一の永遠」(岡倉天心『茶の本』)であり、我々がなすべきこととは、伝統に固執するのではなく、伝統から先人の知恵を学び取り、その知恵をさらに洗練させて次の世代に繋げていくことだろう。

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2010-03-12(Fri) 12:50| 学術書| トラックバック 0| コメント 1

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2010-07-20(Tue) 13:56 | | #[ 編集]

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